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「死ぬ心構えがないのが一番の不幸」・古河市で筋肉を軟らかくして痛みを改善する口コミでおすすめの治療院!!!

おはようございます!

 

もともと神経質な父でしたが、がらりと変わったのは母と、

親しい友人を相次いで亡くした3年前のことでした。

大橋貴子さん(47歳、仮名)の父親(80巌)は、

大手化学メーカーに長年勤めてきた真面目なサラリーマン研究者だった。

 

趣味は囲碁と切手集め、

定年後は年金も十分もらって豊かに暮らしてきた母と友人は同じ脳出血で亡くなりました。

それまで、わりと健康に無頓着だった父が豹変し、

毎日血圧を測って、病院通いを始めました。

 

サプリメントを山のように飲んで、話すことと言えば健康のことばかり。

テレビの通販で見たダイエット器具や健康食品を買って並べては、悦に入っていました。

当初は、健康に気をつけるようになったのはいいことだと、

父の変化を特に気にも留めなかった。

 

だが、徐々に父の言動を疑問に思うようになった。

うちは二世帯住宅で、週末などは父も一緒に食卓を囲むのですが、

そこへ会社員時代の名刺入れをもってきて昔話をするようになったのです。

「ほら、国会議員の名刺もあるぞ」

「この人は、OO商事の社長にまでなった」と現役時代の交友関係を自慢。

 

貴子さんと夫は辟易して聞き流すので、

しまいには小学生の孫にまで名刺を押し付けるように見せ始めた。

子供たちも気持ち悪かって、父はますます孤立するようになりました。

 

母の一周忌を迎えようとする頃、

気晴らしにでもと思ってかけた一言に思わぬ反応があった。

ねぇ、お父さん。お母さんがいなくなって寂しいでしょう。

旅行でも行こうか。

 

私の会社の保養所ならお風呂もバリアフリーで安心だから。

その話を聞いた途端、父は動転したように、早口でまくしたてた。

俺をもうすぐ死にそうな老人扱いしないでくれ。

別に旅行なんて行きたくない。

 

『冥途の土産』とでも思っているのか。

ああ、この人はそんなにも死ぬのが怖いのか。

老いに抗いたいのか。

貴子さんは父の姿に憐憫の情を禁じえなかった。

 

母の死後、一人で生きていくことが不安で仕方なかったのでしょうね。

毎食後、山のような薬やサプリを飲んで、

健康器具に囲まれて暮らしていた父ですが、

1年前に認知症が急に進み、いまでは施設に入っています。

 

お見舞いに行っても私のことがわからないときがあって、寂しいですね。

結婚してからずっと奥さんに面倒を見てもらってきたような人が、

妻に先立たれると、親鳥を亡くしたヒヨコのようになってしまう。

『生き延びる』のに必死という感じです。

 

生真面目な貴子さんの父は、

恥ずかしい老境をさらしたくないという思いが人一倍強くあっただろう。

だからこそ過剰なまでに老いに抗い、死を遠ざけようとした。

だが、そんな努力がアダになったともいえる。

 

京都大学名誉教授が語る。

誰もが若いあいだは、節制や努力、我慢が大切だと思って生きています。

『未来に備えて頑張ろう』と自らを戒めてきたのです。

しかし、本当に高齢になってしまえば備えるべき未来など存在しません。

 

もう長年備えてきた『そのとき』に到達してしまっているのですから。

多くの人は、自分がそんな段階にまで来てしまったことを実感できないから戸惑うのです。

兼好法師は『徒然草』で、

そんな晩年のことを『励み、習ふべき行く末もなし』と書いています。

 

もはや努力や勉強をしてもしかたないのです。

孔子も50歳が人生のピークで、60を過ぎると自然と若い人に道を譲ることができるようになり、

70歳になると禁欲の必要がなくなり、

自由に生きてよいと述べています。

 

若いころは、我慢して努力することが美徳だったかもしれない。

だが、死への心構えとはそんな勤勉さとは無縁のものだ。

ちょっと力を抜いてみる。

それができれば、じたばたしない晩年が送れるはずだ。

 

(「週刊現代」2020年4月11日・18日号より)

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