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おはようございます!

 

カネか、命か

成熟したはずの資本主義社会にあって、

なぜ医療崩壊が発生し「命の選別」が起こり得るのか。

その原因は、我々自身にあると主張する知識人もいる。

 

フランス文学者で「日本辺境論」などで知られる内山樹氏は語る。

これは倫理の問題である以前に、

医療資源の不足という単純で物質的な問題です。

だからこそ、医療崩壊を起こさないための準備は可能だった。

 

なぜなら、多くの人が亡くなる『新型ウイルス』が数年ごとに登場するのは『既知』の事実だからです。

近年では’02~’03年のSARSや’09年の新型インフルエンザがありました。

この時に準備をした韓国や台湾は医療崩壊を起こしていません

そう、新型コロナウイルス禍は起きるべくして起きたのだ。

 

新型コロナは、人々の連帯も引き裂いていく。

フランスの経済学者でEU結成の立て役者でもあるジャック・アタリ氏はこう主張する。

ウイルスに怯えると『自分さえよければいい』と考えてしまいがちで、

『他人のために生きる』という人間の在り方が失われていくのです。

 

その結果生じているのは「分断」された弱肉強食の世界だ。

たとえば、裕福な人と貧しい人の分断だ。

新型コロナの感染拡大を防ぐには、外出を減らし接触を減らす必要がある。

だがおカネがない人は、仕事に行かないと生活できず、自宅待機はできない。

 

かくして「カネか、命か」という難しい問題が生じてしまっているのだ。

立命館アジア太平洋大学学長は言う。

「収入が大幅に減る人への「緊急」の再分配が必要です。

今ほど政治リーダーの資質が問われている時はありません。

 

前出のガブリエル氏は、この先「人種や年齢など、

あらゆる分断が新型コロナによって深まる」と予測する。

17世紀、ヨーロッパでペストが大流行した際は、外国人差別やデマが横行した。

 

そして現代の日本でも、「中国人お断り」という飲食店の張り紙や、

「若者が感染を広めている」という風評など、社会の裂け目は広がっている。

人間の在り方そのものを崩壊させる新型コロナに、

各国の政府も解決策を見いだせずにいる。

 

4月14日に世界の総死者数は12万人を超えた。

経済の落ち込みは深刻で、

今後2年間で日本のGDPに匹敵する約545兆円超の経済損失になるという予測もある。

いったいなぜ、新型コロナを食い止めることができないのか。

 

連帯の不在がキーワードになるユーラシア・グループの社長で国際政治学者のイアン・ブレマー氏が言う。

今の世界は、国際社会を主導する国家が存在しない『Gゼロ』時代です。

’08年の金融危機ではG20の首脳が結束し、世界的な金融システムの崩壊を防ぎました。

 

こうした国家間の連帯が不可能になりつつあるのです。

新型コロナの対応では3月16日にG7の緊急テレビ会議が開かれました。

しかし、米中、日韓、トルコとEUなどの地政学的対立から、各国の足並みは揃わなかった」

 

(「週刊現代」2020年4月25日号より)

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