「言われてみれば、前兆はあった」・古河市で筋肉を軟らかくして痛みを改善する口コミでおすすめの治療院!!!
おはようございます!
言われてみれば、前兆はあった。あれが虫のしらせだったのか。
昔は『コノヤロー!』、「バカヤロー!」と人を怒鳴ってばかりだったんです。
でもその日は、そんな主人が珍しく優しくなって、私に甘えてきたのでよく覚えています。
こう語るのは、’13年に心室頻拍で亡くなった大鵬幸喜さん(享年72)の妻・納谷芳子さん(72歳)だ。
思い返すと切なくなるのは、亡くなる3日前の晩のこと。「主人が「芳子、芳子」と私を呼んだ。
『なに?』と聞くと、『好きだよ!』という言葉に続けて、
『お母さん、おまえがいたから、俺はここまで頑張ってこれた。
いろいろ大変な思いをさせたな。
ありがとな」と言ってくれたんです。
そのあとも、『おい、チューぐらいしてくれや』と冗談っぽくからかってきました。
恥ずかしさに、芳子さんは「何言ってんのよ」と、はぐらかした。
容体が悪化した2ヵ月前から、何をするにも芳子さんを傍に置きたがった。
家政婦さんや看護師さんがいようと、私を呼びました。
軽い用事で外に出た途端、「いいからすぐ帰ってこい」と電話がかかってくるんです。
多いときは何十回も着信があり、私もくたくたになりました。
それだけ必要とされたのは、妻として喜びでもありましたけど亡くなる日も、
病室から真っ先に芳子さんに連絡がきたという。
朝8時くらいに、『よーしこー』とすごく調子が良さそうに電話をしてきた。
『どうしたの?元気だね』と返事をすると『早く来てくれ』と。
それが最後の言葉でした虫の知らせのように死期を悟り、
心細くなって芳子さんに甘えようとしたのかもしれない。
看護師でかつ僧侶という肩書をもつ玉置妙憂氏が、
死の直前に体と心に起こる不思議な変化について解説する。
亡くなる1ヵ月前から、不思議な体験を報告する人は増えていきます。
特に高齢の方は、すでに亡くなっている親の夢を見ることもある。
『死んだ母が川の向こうに立っている』と話す人も多い。
このような体験をするのは、加齢とともに脈拍が少なくなり、
脳が酸欠気味になっているからでしょう。
もちろん、普通に呼吸はしているんですが、
ガス交換がうまくいっていなくて慢性的な酸素欠乏症になっている。
体内で一番、酸素を使うのは脳なので、
ほかのところには影響が出ていなくても、脳が最初に影響を受けます。
そういう低酸素状態だと、幻覚が現れやすいのです。
高山病など、酸素ボンベなしで高い山に登って低酸素状態になると、
幻覚との戦いになるのは有名な話。
急に穏やかで優しくなったり、幻覚を見るようになるのは、
身体が死を迎える準備を始める兆しでもあるのだろう。
大鵬さんが弱さを見せたのは、
最期まで妻の芳子さんの前だけだった白鵬開が見舞いにいらっしやったことがありました。
主人は具合が悪く、あまり話もできない状態だった。
でも、いざ白鵬関の前に立つと、顔つきが一瞬で変わった。
『相撲も日常生活も、何から何まで、ちゃんと横綱らしくしないと、
真の横綱ではないからな』と熱く語ったんです。
私は胸が一杯になりました。
だからこそ、芳子さんは、自分にだけ見せてくれた一瞬の「弱さ」が忘れられない。
死の前兆は決して周囲には伝わらない。
亡くなって初めて「言われてみれば」と気づく。
それは別れの瞬間を、残された者の心に強く刻むためのものなのかもしれない。
(「週刊現代」2020年4月11日・18号より)
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